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職人気質な現場や、個人の能力差が出やすい職場で人を育てるとき、多くのリーダーがぶち当たる特大の壁があります。
「なぜ、手取り足取り教えているのに、思った通りに動いてくれないのか」
結論から言うと、綺麗事抜きに身も蓋もない現実の話をすれば、「どれだけ丁寧に教えたところで、あなたの作業を100%完璧に再現してくれる人なんて、この世に一人もいない」ということです。
だからといって、理想のクオリティを求めて細かいところまでガミガミと注意しすぎると、相手はプレッシャーに耐えかねて会社を辞めてしまいます。
製造の現場でリーダーを任されて私も、かつてはこの「完璧にやってほしい理想」と「細かく言うと辞めてしまう現実」の板挟みになり、凄まじく頭を悩ませてきました。
この記事では、仕事の習得スピードや理解力に大きな差があるメンバーを、誰一人潰すことなく、チームとしてのパフォーマンスを最大化させるためのリアルな育成ノウハウをシェアします。
1. 「見といてな」で始まる、初期の理解力を見極める選別法
新しいメンバーが現場に入ってきたとき、まず最初にあらかたの仕事の流れを説明したあと、私はあえて「ひとまず、先輩の作業を見ておいてね」と指示を出します。
実は、この「見といてな」という抽象的な指示は、その人の初期の理解力や察する力を見極めるための『最初の選別』として非常に有効です。
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- 理解力がある人:ただ「見といて」と言われるだけでも、自分で「手の動かし方」や「道具の置き方」などのポイントを無意識に察知して、ある程度仕事の本質を掴むことができます。
- 理解力に差がある人:サボっているわけではないのに、視線は現場に向いていても情報が頭に入ってきません。
なぜなら、彼らは「何を見ていいのか、どこに焦点を合わせていいのか」が、自分では分からないからです。この時点で、「あ、この人は普通のマニュアルや指示の出し方では立ち尽くしてしまうタイプだな」と、リーダー側が個人の特性を把握することが重要になります。
2. 何を見ていいか分からない人への「実況解説」とロールモデルの提示
「ただ見ておいて」ではフリーズしてしまうメンバーに対して、頭ごなしに叱るのはナンセンスです。
彼らを動かすためには、リーダーがカメラのズームレンズを絞るように、視点を一つずつ指定してあげる必要があります。
2〜3人が同時に動いている複雑な現場であれば、私は具体的にマンツーマンで横について教えます。
「まず、このAさんのこの手の動きだけをじっと見て」
「次に、Bさんがどういうタイミングで道具を移動させているか解説するね」
「次に、Bさんがどういうタイミングで道具を移動させているか解説するね」
このように、現場の動きを一人ずつ細かく「実況解説」してあげるのです。
全体を漠然と見せるのではなく、見るべきポイントを徹底的に細分化して脳のパニックを防ぎます。
その上で、「最終的には、このA先輩みたいな動きができるようになってほしい」と、目の前に具体的なロールモデル(お手本)をセットしてあげます。
目指すべき完成形をリアルにイメージさせることで、何を見ていいか分からなかったメンバーの頭の中に、ようやく「自分がやるべき仕事の形」がハッキリと描き出されるようになります。
3. かつて、たくさんの人を「辞めさせてしまった」という猛烈な後悔
今でこそ「最初は妥協しよう」なんて言っていますが、20代前半の若かった頃の私は、本当に傲慢で最悪なリーダーでした。
自分のいる製造の現場は、能力差がはっきりと出る世界です。
プレイヤーとしてある程度仕事ができてしまった当時の私は、仕事の覚えが遅いメンバーに対して、心の中で本気でこう思っていました。
「こんな簡単な作業、見たら誰でもできるやろ。なんで教えた通りにできないんだ」と。
当時の私は、相手のキャパシティや特性を理解しようともせず、自分の「100%の完璧な再現」を相手に狂ったように押し付け、頭ごなしに厳しい言葉をぶつけていました。
結果として、たくさんの人を傷つけ、プレッシャーで追い詰め、何人も仕事を辞めさせてしまいました。
今振り返っても、きっと彼らからは相当に恨まれていると思いますし、「若かったから」という一言だけで済ませられるような問題では決してありません。本当にひどいことをしたと、今でも猛烈な自責の念があります。
しかし、そうやって人を辞めさせ続け、チームがうまく回らなくなり、自分一人ではどうにもならなくなるという痛い洗礼を経験して、私はようやく気づかされたのです。
「悪いのは、仕事ができない彼らの根性じゃない。自分の理想を他人に押し付けて、潰れるまで追い詰めている、自分のマネジメント(ロジック)が100%間違っているんだ」と。
そこから泥水をすするような思いで、自分のやり方と、人との向き合い方をガラリと変えるための生存戦略を必死に組み立て始めました。
4. 【解決策】細かく言いすぎると辞めてしまう。最初に必要な「妥協のロジック」
人を潰しまくった過去の代償を経て、私がたどり着いた結論が、「最初は、徹底的に妥協する(合格点のハードルを下げる)」ということです。
細かい再現のズレをその都度すべて指摘して、「ここも違う、そこもダメだ」と言いたくなる気持ちは、過去の私自身が一番よく分かります。
しかし、細かすぎる指導は、相手のキャパシティを簡単に超えてしまいます。今の時代、それをやると本人は自信をなくし、すぐに辞めてしまいます。
せっかく時間をかけて教えたメンバーに辞められて現場の人数が減ることは、チームにとって最大の損失(大損)です。
だからこそ、リーダーは冷徹な損得勘定を持つ必要があります。
「100%の完璧な再現は、最初から諦める」
「本人が潰れて辞めてしまうリスクを避けるために、まずは『ここさえクリアしていれば合格』という最低限の妥協点をコントロールする」
「本人が潰れて辞めてしまうリスクを避けるために、まずは『ここさえクリアしていれば合格』という最低限の妥協点をコントロールする」
まずは現場に居続けてもらい、仕事に慣れてもらうことを最優先にする。
最初から完成形を求めず、本人のキャパに合わせて少しずつハードルを上げていけばいいのです。
◆ 現場のジレンマを突破する育成ステップ
| 育成の段階 | 具体的なアプローチ(やり方) | 意識するマネジメントのロジック |
|---|---|---|
| 1. 初期の見極め | あえて「見といてな」とだけ伝え、自力で仕事の要点を察する力があるかどうかを観察する。 | 相手の理解力の基準(特性)を最初に見分けるための選別。 |
| 2. 視点の絞り込み | 自力で動けない人には、複数人の動きを「実況解説」し、具体的なロールモデル(お手本)を目の前に提示する。 | 脳のフリーズを防ぐため、見るべき焦点を一つにズームしてあげる工夫。 |
| 3. 妥協点の維持 | 細かすぎる注意を完全に封印する。「完璧な再現」を諦め、最初は最低限の合格ラインだけで良しとする。 | 「細かく言いすぎて辞められるリスク」を徹底的に回避し、現場の存続を最優先にする。 |
まとめ:完璧なプレイヤーを育てるな、回り続ける組織を作れ
優秀なプレイヤーである人ほど、部下にも自分と同じ「完璧な再現」を求めてしまい、結果として組織を崩壊させてしまいます。
1000人将のレベルなら個人の圧倒的なマンパワーで押し切れますが、その上の「将軍(真のリーダー)」になりたければ、自分の理想を他人に押し付けるのを今すぐやめなければなりません。
周囲の「もっと厳しく指導しろ」「プロなんだから完璧にやらせろ」という無責任な一般論に流される必要はありません。
たくさんの人を潰し、失敗を重ねて今のやり方・考え方にたどり着いたからこそ、私は確信しています。
大切なのは、「メンバーの凸凹(デコボコ)を受け入れ、彼らが辞めずに、チーム全体としてある程度のクオリティを維持して勝手に回り続ける仕組みをどう作るか」という冷徹な組織の損得勘定です。理想を捨てて現実的な妥協点をコントロールする覚悟を決めたとき、組織は最も強固に回り始めます。
もし、部下の指導に疲れ果ててしまった、すぐ人が辞めていくと悩んでいる現場のリーダーの方がいれば、お気軽にお問い合わせページよりメッセージをお寄せください。
かつて大失敗した私だからこそ、あなたの痛みに寄り添い、一緒に「妥協と仕組みのパズル」を組み立てていくヒントを渡せるはずです。


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